サバニ帆漕レース、その3
「だぁーーーー!!」
「うわぁーーー!!」
「もう駄目だーーー!!」
雄叫びが前からも後ろからも聞こえてくる。
海水がどんどん入ってくる。
サバニが斜めに傾いているのだ。
横に見えていたアウトリガーは
今では真上に見えるのでは
ないかと思うほど高く上がっている。
あぁ、これで人生が終わった。
短かった人生だったな。
そんなことになるならもっと好きなことを
やっておけばよかった…。
私の中で後悔の波が何度も何度も押し寄せ、
悔しさで心が一杯になる。
ま、これも何かの縁だ。
交通事故で死ぬより幸せだ。
と人生を諦めかけたその時、
サバニとアウトリガーが元の
位置に戻りだしたのだ。
叫び声が笑い声に変わる。
何という奇跡!!
世界中にいるであろう、
あらゆる神に感謝をする。
サバニは何事もなかったように
風を受け前に進んでいる。
みんなの笑い声は止まらない。
お腹を抱えながら笑い、
涙も出てくるほどだ。
笑いながらも他のサバニチームに
この無様な姿を見られてないか
と気になり、周りを見渡す。
よかった。まだ出港していないようだ。
ただ、近くにいた漁船はその
一部始終を見てたらしく、
大丈夫か?このチームは。
と呆れ顔でサバニの連中(私たち)を見ながら
通り過ぎていくのだった。
↑時には風任せに進路決めることもあるのだ。
漕ぐのが飽きた!というわけではないよ。(たぶん)
つづく
スタッフ:タマエ
サバニ帆漕レース、その1
サバニ帆漕レース、その2
を見逃してしまった方や
ちょっと復習、という方はこちらをどうぞ。
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